何が生まれるか可能性を残したい、いつでも心を柔軟に~ イラストレーター・鈴木阿以さんのライフスタイルとしてのピラティス【My Story】

ピラティスを継続的に実践することで、身体や精神、はては人生そのものが変わったという先輩たちの話から、ピラティスで自分を「変える」ためのヒントを得ようというこの連載。今回紹介するのは、ピラティス歴2年のジュエリーデザイナー/イラストレーター、鈴木阿以(あい)さんだ。ロンドンでデザインを学び、フリーランスでジュエリーの制作やファッション業界での仕事を経て、今はMy’sアトリエに暮らす鈴木さんが、毎週「ここに来よう」という気持ちでピラティススタジオを訪れるという。無限のデザイン界で心に従って作品を生み続ける鈴木さんのライフスタイルに迫った。

気分が乗った時こそ制作に没頭。頭で考えるというより手で考える感覚

―ジュエリーデザイナー/イラストレーターを志されたきっかけをお聞かせください。

もともと絵を書くのが好きで、高校卒業後、美大に行こうか迷っていた中、アートをやるなら日本を離れてチャレンジしたいと思い、イギリスの芸大のジュエリーデザイン科を受験しました。制作物の提出試験に受かり、そこで4年間、本格的にデザインを学びました。卒業後は展覧会をいくつかやりましたね。ビザが切れるタイミングで日本で働きたいと思い、帰国。その場所がジュエリーショップでした。ヨーロッパのクリエイターらのセレクトショップで、まだ制作に携わることはなく、販売・企画・販促をやっていました。5年経った頃、「自分で作りたい」って思い退職したんです。今思うと転機だったなと。イラストレーションも丁度そのタイミングで、たまたまジュエリー店の販促物でメッセージカードを作り始めたのがスタートです。そこからちょくちょく書くようになって、仕事に繋がりまして、もう早いもので10年です(笑)

―まわりに人が集まってくる印象がありますが。

人には恵まれていますね。人と人のつながりで仕事が入ったりと色んな仕事ができるようになりました。つながりは大事だなと感じます。人との出会いで、絵本という新しいジャンルに挑戦する機会もありました。思わぬところで私の作品を見た人が声をかけてくれるんです。どこで誰が見ているかわからない、感じ方も様々ですし、未知なところが愉しいです。

―ジュエリーデザイナーとイラストレーターの分量は?

ジュエリーを基盤にやっていきながら、連載などがないイラストレーターは、話が舞い込んできたら、ちゃっとやるスタンスです(笑)

―どういった場所や時間にインスピレーションがわきますか。こだわりや、決めごとはありますか。

イラストに限っては、お題を基に考えます。何もないところで生まれるというよりか、制限があったほうが、その中でどれだけ自分のクリエイティブを考えられるかどうかを大事にしています。

―ぬり絵ブック「不思議の国のアリス」ではいかがでしたか?

題材が「不思議の国のアリス」、コロリアージュ(塗り絵)ということに加え、一枚一枚人の顔を入れることと条件がある中、塗る人の気持ちを考えられたクリアの一本線であるということが、一番苦しかったです。曖昧な線が一本でも入っていたらいけない。私はどちらかというと、強弱のある線、顔を描かない主義でしたから。

―これまでとは正反対のことですね。挑戦だったと言えると思いますが、どうやったんですか?

いざとなったら書くしかないなと。「こんなの私の絵じゃない」って葛藤もありましたが、その中でどれだけ自分らしさを出せるのか。『不思議の国のアリス』というお話は、有名ですし、私自身好きだったことも助けられました。実際は、インクペンをサインペンに変えたり、かなり今までと違うアプローチで、最後までこれでいいのか苦悩の日々でしたけれど(笑)終わった後、こういうことも有りだなと。自分のスタイルが固執しすぎると狭まっちゃうけれど、これはこれで違う視聴者が楽しんでくれるものだったら、これもひとつのスタイルだと思えたんです。どうなるかわからないから、ちょっと乗っかってみようと思える。そこで何が生まれるか可能性を残しておきたいですね。

―ジュエリーに対してはどうでしょうか?日頃から考えているものですか?

いえ(笑)ある期間に集中して考えます。展示やPOPUPSHOPなど、自分のコレクションを用意する時ですね。考えながらも、作りながらもデザインは変わっていきます。

―想像も無限大で、デザインも無限大で、完成を決めるのは大変では?

自分の感覚ですね。その日は良いと思っても、1週間後に違うなと思うこともあります。ただ商品は、相手がいることなので、バリエーションは用意します。例えば長さにしても、人それぞれ好みがありますから。

―制作中において、一番大変なことはなんでしょうか。

ジュエリーは、その日その瞬間、自分が出せる‶技術″ですね。体調が悪かったり、集中力が切れて他のことを考えていると失敗してしまいます。手先に出てしまうんですね。気分が乗らないと、いつもできることが全然できない。朝起きて、天気を見て、気分がわかります。晴れの日は「今日はやれる」って、いつもより早起きしちゃいます。逆に曇りでは気分が乗らないです。やらないわけではないけれど、音楽を聴いて紛らわせたりしますね(笑)

―気分が乗る日はどこまでやるんですか?

朝起きてから作り始めて、気付いたら夜10時ということもありますね。ある意味マインドフル状態ですね。

―ご自宅がアトリエということですが、プライベートと仕事の線引きは大変ではないのでしょうか。

そもそも、家だと思っていないんですよね。アトリエに住んでいる感覚です(笑)追々スタジオを持てたらいいなとは思いますけど、家が好きなんですよね。

―鈴木様の作品は、どれも緻密で大人の女性の雰囲気を感じます。鈴木様そのものを映し出しているように感じます。「オリジナリティーを出すこと」は、とても難しいことだと思うのですが、いつもご自身とどういったことを向き合い、作品に投影させていくのでしょうか。

自分を出そうとは、あまり考えていません。書いていると自然になっちゃう(笑)特に寄せているわけではないんです。イラストはインクペンで書いていますが、頭で考えているというより手で考えている感覚です。「ピラティス」と同じといえますね。逆に考えてしまうことは、最終的にこういう形にするというグラフィカルな時ですね。素材は描けるけど、絵のバランスを考えなければいけないことは、気分が乗らないと書けません(笑)雑誌など締め切りがあるものは苦しいのが本音ですが、意気込みだけは自分の中で整えます。

自分の中に眠っている‟創造性”を目覚めさせる準備体操

―数あるエクササイズの中で「ピラティス」を始められたきっかけをお聞かせください。

姉がずっとBASIピラティスに通っていて、「やりなよ」って言われてました。その時は「ピラティスってなに?」って馬鹿にしてたんですが、ある日腰が痛くなってしまい、病院に行ったけれど特に悪いところもなく、湿布を処方されただけだったんです。でも全然良くならないし、水泳をやろうかとも思ったんですが、姉の「ピラティスやれ、やれ」の言葉が浮かんで、丁度オープンしたばかりの恵比寿スタジオを体験したのがきっかけです。

―実践前後での身体や心の変化はありましたか。

変わりました。何カ月経つにつれ腰の痛みがなくなりました。今は全然痛くないです。腰痛いときは気分が乗らないことが多かったですね。

―2年以上続けられているうえで、始めの頃といまレッスン中に感じられていることは変わりましたか。体の使い方や気になる点は変わりましたか。

はじめの頃は、動きがわからないから見よう見まねでやっていて、いっぱいいっぱいだったけれど、次第に、ペルビックカールなど形を覚えたものから少しずつ、自分の身体により集中できるようになりました。「ピラティス」実践直後は身体が軽くなっていると感じます。身体がなまってきて、今日は動けるだろうかと思いながらもスタジオに行くと、意外と動けて気分が良くなっている。体調が悪いなという日こそやったほうが良くなりますね。

―なぜ2年以上続けてきたのか、続けてこられたのかについて率直にお聞かせください。

このスタジオ(恵比寿)に来ることが好き。インストラクターの方と会うことが楽しいです。無理なく続けられています。

ピラティスがお仕事や創造性に影響することはありますか。

「ピラティス」が直接的に創造性に関係してくるというよりは、自分の中に眠っている‟創造性”という自由な部分を目覚めさせる準備体操のように感じます。そういった意味で、体とココロは繋がっているんじゃないかと。インクとペンと紙と創造性が揃っていてもそれを動かすカラダがなければ何も生み出せないですからね。ジュエリー制作も同じで、健康な体があってこそ、初めて取りかかれるもの。だから、健康な体も仕事と道具と同じではないでしょうか?自分なりの方法で体調を整えることは、自分の仕事に対する責任感の表れとも言えると思います。私の場合は、「ピラティス」がサポートしてくれています。

―最後に、「ピラティス」に期待することは何でしょうか。

なんだろう…特にないです(笑)時間ができた時に来る場所。ここに来ようという気持ちしかないかもしれないですね。

text by Tomoe Eda

鈴木阿以
ジュエリーデザイナー/イラストレーター

ロンドン・セントラル校とセントラルセントマーチンズカレッジオブアート&デザイン/ジュエリーデザイン科卒。帰国後、フリーランスでジュエリーの制作やファッション業界での仕事を経て、2009年よりイラストレーターとして活動を開始する。インクを使ったドローイングを中心に、鮮やかな色彩と手書きの線から生まれるのは、どこかダークさと人の優しさを感じさせる、唯一無二のファンタジックで独特の世界。自然や音楽、ファッションや食など生活に関わるすべてのものにインスパイアされながら、ジュエリーデザイナーとしても。自身のブランド「ポエティーク」を展開中

<ウェブサイト>
イラストwww.suzuki-ai.com
ジュエリーwww.poetique-bijoux.com

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